相方ぴよぴさん(@piyoall)さんの誕生日に描いた絵に文を付けたモノです。


「ね、ねぇ…。これじゃぁ周りが良く見えませんわ?」

「けど、絶対外して行った方が良い…。」

今夜は豊穣祭の夜会へ出向く事になった。

諸外国の、この国と国交を持つ国の来賓が参加するからだ。

当然のごとく着慣れないドレスを着て行かねばならず、公式の場故に姫である証ティアラを戴冠していかねばならない。

ヴァリオンもお付の騎士として正装をし、来賓の元へ回る際同行する事になっている。

着替え終わり、居間へ行くと既に彼は待っていた。

「お待たせしましたわね。」

「いや。ティナ…綺麗だ。」

「…有難う。ヴァリオンも…とても素敵よ。」

「けど…。」

「え?」

彼はそう言うと私に近寄りかけていた眼鏡を取り上げた。

「眼鏡は…外した方が良い。」

と言う事で冒頭へ戻る訳だ。

「けど…。」

「俺がティナの目になるから平気だろ?」

「…そうね。外していても、ヴァリオンの顔はちゃんと見える。」

ヴァリオンの言う通りティアラを付けて眼鏡をかけてというのはワタクシ自身も正直邪魔くさかった。

「うん。それに…はっきり見えない方のが、その…他の男の顏見なくても済む。」

目線を外し鼻の頭をポリポリと描きながら照れくさそうにしている彼に、

「まぁ?ワタクシが…貴方以外の殿方に心を奪われるとでも思ってるの?心外だわ。」

と少し膨れたように見せると、

「いや、そうじゃないが…。うーん…。」と悩み始める彼に、

「フフッ…嘘ですわよ。ヴァリオン意外に、心を奪われる事などないわ…。」とその頬にそっと触れた。

「ヴァリオンだけ見えればいい…。他は…要らないわ。」

「…夜会。行かないとダメか?」熱がこもり潤んだオレンジの目がランプの光で揺れている。

「そうね…本当は行きたくはないけれど、今日はいかないと。」肩を竦め残念そうに言うと

「そうか…。じゃぁ、2人の時間は後だな。それでは参りましょうか。姫。」

「えぇ。そうね。夜会、楽しみましょう?」

「あぁ。そうだな。楽しむとしよう。」

そう言って部屋のを戸を開けて、会場のある本宮へと向かったのだった。

fin.