滞りなく、新年が始まりしばらくたった頃 。
何時もの様に朝一番にリムの漁場へ着きたいと早めに家を出た。
誰もいない漁場は人の喧騒はなく、凪いだ波の音だけが響いていて、
僕にとってはとても気の休まるひと時だった。

リムの漁場へ着くと、今日はすでに先客がいた。
海の凪いだ波に合わせるように、金色の柔らかな髪をふわふわと躍らせながら、
鼻歌を歌って竿をたらしている。

…あ。あの子…。

かごがいっぱいになったのか納品所へ向かおうと振り向く彼女に声をかけられた。


「あ!えっと~。スタリオン君だったよね!?」

にこにことしながら華奢な体からは想像もつかない程、パワフルに籠を引きずって近くへやってきた。


「え、あっ・・と。おはよう。ヴュステさん。」

「あ、おはよう!挨拶忘れちゃったw来るの早いね~?」

「ヴュステさんこそ!仕事、リムウルグにしたんだ?」

「うん!そうなの!だってここ気持ちいいでしょ?お仕事楽しくしたいじゃないw」

そういいながらコロコロと笑う。

「そっか。じゃぁ…。これからよろしくね。」

「うん。よろしく!まだまだこの国の事わからないことが多いから…。
いろいろと教えてくれると助かるかなっ。」

「うん。僕で分かる事なら教えてあげるよ。とりあえず、友達は大事にしないと…ね。」

「・・・うん!」

彼女が返事をするまでの間が少し気になったが、
人と話すことが苦手な僕がこんなにも人と話していることに内心驚き動揺している気持ちの方が大きくて、
すぐに忘れてしまった。

「じゃぁ…。納品してこないと。また後でね。」

そういって籠を持ち直すと納品所へと走って行った。

僕…なんで”友達は大事に…”なんて言ったんだろ。
何か心の中でチクッとした気がした。

これから僕の中で何かが変わりそうな予感と、今までにない事の戸惑いの中で立ち尽くしていた。