●不思議な女(ひと)


【うちの子よその子ファボ妄想】ニエンナ×ミラさん(@karan_alba)での一コマ。


アルバに来てから随分とたった。

国民になりまだ何となく、「人」として「生きる」ことにはなれていない。

そんな言い方をするとシンバさんは笑うけれど、兎に角毎日食べる物を口にし、睡眠をちゃんととる。

人にとって当たり前の様な事から、アタシは今学んでいる。

そんな中で、昼間は絵を描きに外へ出るついでに、忘れがちな食事をとる為に、酒場へとちょくちょく顔を出す様になっていた。

酒場は昼でもにぎわいを見せ、様々な人達が来ては去っていく。

その人々の中に一人、最近気になる女性がいる。

その女性は女主人のウィアラさんの傍らで、店の手伝いの様な事をしているが、店の人.という感じではなく、

国民服を着ている所から見ても、従業員な訳ではなさそうだ。

てきぱきと動き、時には柄の悪い客を相手に、女ながらパッパと捌いて店の外へと追い出している。

この国の男性たちは高身長な人が多い様で、普通なら女性であれば中々太刀打ちしようとしても、敵わないであろう。

けれど、その人はその高身長な男性に引けを取らない程背が高く、体にも厚みがある。

一言で言えば大変失礼だけれど、体格の良い女性だ。

けれど良く良く見れば、とても可愛らしい顔に、艶やかで程よく引き締まった、筋肉の張りの良い褐色の肌に黒い髪が良く似合っている。

その女性を目で追う内に、この人を描いてみたいと思うようになっていた。

そんな折、彼女と話をする機会を得た。

その日は収穫祭で、国を挙げてのイベントが行われている。

酒場でも特別な定食を提供する事になっており、それを目当てにやってくる客に、何時もとは違いごった返すような人ごみになっていた。

テーブル席は既に満席で、外には誘い合わせて食べに来たのであろう人達が空きを待っていた。

”中にも入れないのかしら…?”と思い、その人達と同じように外で並んでいると、

 

”カラン…”

 

と扉が開く音と共に、その女性が出てきた。

 

「あー。この中に一人で来てる人はいないかい?カウンターなら1つ空いてんだけどね?」

 

と言うと、ゆっくりその待ち人達へと目を向け、そしてアタシと目が合った。

 

「アンタ、一人かい?」

「ええ…一人…。」

「そうかい、カウンターで良けりゃ、空いてるけどどうする?」

「それでいいわ…。」

 

というと、彼女の後について店の中へと入る。

彼女が前に立つと前が全く見えなかったけれど、その後ろ姿をまじまじと見ていた。

 

”わぁ…肩がこんなに広い…。それに筋肉…綺麗…。”

 

ぼぉっとしてみていた為に彼女が止まった事に気が付かず、その背にぶつかってしまう。

 

「ひゃ…。ご、めんなさい…。」

「気にしないでいいよ。ほら、今日はこの人ごみだからねぇ。ちょっと狭いけれどここ、座るといいよ。」

 

と椅子を引いてくれた。そのひかれた椅子に腰かけると、

 

「注文はウィアラに直接頼むと良いよ。じゃぁね。」

 

と次のお客をさばきに行こうとする彼女に、思い切って声を掛けた。

 

「あの…!」

「ん?なんだい?」

「あの…忙しいのにごめんなさい…。アタシ…絵を、描いてるの…。貴女…今度モデルになって貰えないかしら…?」

「はぁ??」

 

明らかに訝しげな顔をして眉間に皺が寄る。

 

「なぁに冗談いってるの。この忙しい時に…。茶化しに来ただけなら他のヤツに席譲るよ。」

「冗談じゃないわ…。」

 

というと真剣に見つめる。

その様子を彼女も暫し見た後、

 

「アンタ、名前は?」

「ニエンナ…。」

「ニエンナ。ふぅん…。分ったよ。その話は明日にでもしてくれ。今日はホント忙しいから。ウィアラが死にそうだよ。」

 

というとカラっと笑い立ち去ろうとする。

と、こちらも彼女の名前を訊ねていなかったことを思いだし慌てて

 

「あ…名前…教えて…?」

 

と訊ねた。

 

「あぁ、アタシはミラっていうんだ。大抵はココにいるからさ。じゃぁね。」

 

といってヒラヒラと手を振りまた忙しく店の中を捌き始めた。

 

「ミラ…さん。」

 

体の大きさに違わず懐の広い大きな人だなと、その気風の良さに惚れ惚れとして、

思い切って声を掛けて良かったと心から思い、明日また、色々とお話出来たらいいなと思うと、自然に口元に笑みがこぼれていた。

 

fin...